産んだ覚えのない娘が突然訪ねてきて

「沖縄で産んだ覚えのない娘が突然訪ねてきて 」

産んだ覚えのない娘が、突然、訪ねてきて、 「お母さん会いたかった」 と私に云った。 色が白くてか細くて、いかにも幸うすそうな娘だった。 私は沖縄で無意識に探していた。 その娘と私の似ているところを だけど、探し出せなかった。 その娘は、私にあまりに似ていなかった。 目も、口も、鼻も、まゆげも、なにもかも。 「お母さん沖縄で会いたかった」 娘はただただそればかりをくりかえす。 「お母さん会いたかった」 娘は、ただただそればかりをくりかえす。 ぞっとするくらい無表情で ただただそればかりをくりかえす。 「いいかげんにして、私はあなたのお母さんなんかじゃない。あなたを産んだ覚えなどない」 私は、耐え切れなくなってついにその娘に言い放ち、追いかえそうとした。 そのとたん。 「パキン」 と音がして、 その子は、もろくも崩れ去っていった。 私は、ほうきとチリトリを持ち、玄関に散乱した破片を集めていた。 破片を集めながら、ふと思い出していた。 そういえば、あの娘の、あのまつげ、 あのまつげだけは、ほんの少し私と似ていたかもしれない。 だけど、見事に砕け散ってしまった、 その破片からまつげを探し出すことは、 すでにどうにも 不可能だった。 そんな沖縄での一日んはじまり。

ソーシャルブックマークへ登録する
はてなブックマーク Yahoo!ブックマーク GoogleBookmark Buzzurl ニフティクリップ Choix del.icio.us Livedoor クリップ